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『土佐日記(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』


by E.O.



『土佐日記(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』

紀貫之 西山秀人



アルバータ大学には世界中のあらゆる国から留学生が来ています。この地で生活していると、自分が日本人であることをしばしば意識させられます。日本人であるからには、日本の文化についてよく知っておきたい——そんな時にふと日本の古典文学を読みたくなりました。



『ビギナーズ・クラシックス』とは


角川ソフィア文庫の『ビギナーズ・クラシックス』シリーズは、大雑把に言うと古典作品の入門書です。このシリーズは古典作品の有名な章段を現代語訳、原文、寸評という順でまとめています。『源氏物語』など原作が大部のものでは、章ごとのあらすじも付いています。古語の部分を無視して現代語訳と寸評のところだけ読むという読み方でも全く問題ないため、古文が苦手な方にもおすすめです。



『土佐日記』を読む


男もすなる日記といふものを、 女もしてみむとてするなり。

(男の人が書くと聞いている日記というものを、女の私も試みに書いてみようと思って書くのです。)


『土佐日記』といえば、高校の古文の時間に習ったという方も多いと思います。平安時代の和歌の巨匠・紀貫之(きのつらゆき)が女性のふりをして女手(おんなで:「ひらがな」のことで、当時は主に女性が用いた)を使って書いた日記です。内容としては、赴任地の土佐から京都に戻るまでの記録を脚色しながらまとめた旅日記のようなものです。


『土佐日記』を一通り読んだ私は、この作品が私が高校生の頃に思っていたよりもずっと面白いということを知りました。女性のふりをして書いているはずなのに、書き手が男性であることをまったく隠す気がなく、親父ギャグやら下ネタやらで笑いを取ってきます。千年前の王朝貴族もこんなくだらないことを考えて笑いあっていたんだ、と妙に感動します。


かといって可笑しいばかりなのかといえば、そんなこともありません。『土佐日記』を読むと、千年前の旅がどんなであったか、はっきりと想像させられます。大勢の知り合いが見送りに来たり、天気が良くなるまで延々と出発を見送ったり、海賊を恐れて願掛けしたり。また、美しい風景を皆で賞美したり、赴任地で死別した子を思い出しては悲しんだり、と旅の場面に応じて書き手や同行者たちの思いと人間模様が鮮やかに描かれています。



もっと古典文学を読む


『土佐日記』によって開拓されたひらがなの表現は、『源氏物語』や『枕草子』などに代表される平安時代のかな文学を生み出しました。こうした古典文学を読んでみると、そこに現れる価値観や美意識は、核心の部分では私たち現代の日本人のものとほとんど変わらないことに気づきます。「カナ」ダで「かな」文学を・・・なんて、『土佐日記』ばりの親父ギャグではありませんが、かな文学を読むと日本の文化に対する理解が深まるのは間違いないと思います。

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